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サンプリングではなく、クラシックの名曲を大胆にフィーチャーしたポップ・ミュージック。それがスウィートボックスの音楽だが、この個性は、考え 出されたものではなく、偶然の産物だった。プロデューサーのGEOが生まれ育ったのはドイツ。ポピュラー・ミュージックと同じように、クラシックも身近な存在として聴いてきた。その彼が大好きなバッハ「G線上のアリア」にラップをのせる、というひらめきを軽い気持ちで試してみた。それが「エヴリシング・イズ・ゴナ・ビー・オールライト」という曲になり、まずシングルとして1t997年にリリースされる。

斬新なアイディアと、ストーリーテリングなラップが新鮮に映ったのだろう。これが大ヒット。特に日本では全国のFM局でヘヴィーオンエアーされ、翌年リリースされたデビュー・アルバム『スウィートボックス』は、65万枚を超えるセールスを記録。この予想外の結果がスウィートボックスの運命を決定づけることとなる。日本での爆発ヒットがスウィートボックスの方向性を明確に定めることになったのだ。

その後、GEOはよりパワフルな歌を求めて、ヴォーカリストの交代を決意。そうして迎えられたのがLA出身のジェイドだ。当時20歳だったジェイドは、子供の頃からピアノを習い、ヴォーカル・トレーニングを受け、合唱団などで歌ってきた実績がある。加えて、ソングライティングにも才能を発揮。
2001年にリリースされた2ndアルバム『クラシファイド』以降、大半の歌詞をジェイドが書いている。そのほとんどは、彼女の経験や感情をベースにしている。ジェイドの加入により、スウィートボックスの音楽に“共感”という新たな魅力が加わることになったのだ。さらにジェイドの存在自体がGEOのクリエイティヴィティを大きく刺激していくことになる。2001年の段階で、ジェイドは、こんな風に語っている。

「GEOとは1年くらい一緒に曲作りに取り組んだの。それを通して、彼は、私のキャラクターや声質をt知り、それにより私の個性をアルバムに強く反映させたいと思ったみたい。これからもスウィートボックスは、クラシックの融合という路線は守っていくけれど、それだけではなく、もっと新しい要素を加え、変化していくことになると思うわ」

その新しい要素として、2ndアルバム以降は、ヒップホップではなく、ポップ色を濃くしていくことになり、ジェイドがロックへの関心を強めていった 4thアルバム『アダージォ』以降は、ヴォーカルがよりパワフルになる。これが『エヴリシング・イズ・ゴナ・ビー・オールライト』のニュー・ヴァージョンを生むことになった。2005年にリリースされた初めてのベスト盤、そこに収められたニュー・ヴァージョンは、ロック風アレンジで、バンドのメンバーとパワフルにデュエットし、オリジナルとはかなり雰囲気が異なる。このアレンジのアイディアは、ジェイドによるもの。彼女もGEOと同じ建物内にスタジオを持っており、作品ごとにより深くクリエイティヴ面に関わるようになっているのだ。

スウィートボックスは、これまでに4枚のオリジナル・アルバムと1枚のウィンター企画アルバム、1枚のベスト・アルバムをリリースしており、新作は、5枚目のオリジナル・アルバムとなる。この間、ジェイドは、クラシックとの融合の難しさを口にしたことがある。

「スタジオの床にはいつも数え切れないほどのクラシックのアルバムが転がっているわ。でも、その中でポップとの融合に使えるものはほんのわずか。それを探し出すのがとても大変なのよ」

冒頭でも触れたようにスウィートボックスの場合、クラシックを単純にサンプリングしているわけではない。あくまでも融合をスタイルとしているため、ストリングスの演奏などもレコーディングし、それをテクノロジーを駆使することで、独自のアレンジを施し、自分達の音楽に融合させている。これが耳慣れたクラシックの名曲が刺激的に聴こえる理由である。

ここ数年、クラシカル・クロスオーヴァーの人気が世界的に高まっている。アーティストの大半は、クラシックを学んできた人で、クラシックをポップにアプローチする手法をとっている。それに対して、スウィートボックスは、ポップ・サイドからクラシックへのアプローチを試みている。ここに独自性がある。新作でもまたまた刺激的なクラシックとの融合を聴かせてくれる。そして、そこに感じるのはますますパワーアップしているということだ。これも同じことの繰り返しではなく、作品ごとに変化し続けてきたからこそだと思う。


(オフィシャルウェブサイトより・2006年7月現在)


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